前回のつづき
「AIで契約書のリーガルチェックをやってみた その1」の続きです。AIを契約書のリーガルチェックに使用するために外せない2つの問題があり、それは次の2点です。
- ① AIに搭載された法律関係の情報量が豊富なこと
- ② 情報漏洩をしないこと
この2つを同時に実現しないといけないのですが、その方法として「ローカルAIを使用する」という方法は無理、という結論に私は至りました。もっとも、パソコンの制作に数百万円をつぎ込めばローカルAIで上記①②のいずれも実現できるのですが、そんな莫大な金額はつぎ込めないので、無理という結論になりました。
的確かつ情報漏洩なくAIで契約書のリーガルチェックをする方法
ローカルAIは使えないのでクラウドAIを使うしかない。かといって第三者がデータを見られる状況にはしたくない。いろいろ考えた結果、「第三者がデータを見られない状況を作って、その中にクラウドAIを呼び込めばいい」という考えに至りました。
ここでもややこしい話は省略しますが、要は「クラウドAにデータをアップするが私しか扱えない状況を作り、処理に必要な分だけのデータを暗号化してAから別のクラウドBに送り、Bに呼び込んだAIに処理させる」というシステムを作り、それを使った契約書リーガルチェックアプリを作りました。
契約書のデータはクラウドAにとどまるので私以外は見られません。また、暗号化されたデータはBに送られますが、BではAIの処理が終了したらすぐ抹消される設定なので、データの漏洩はありません。
これがその契約書チェックアプリのトップ画面です。いま業務委託契約書のサンプルを読ませて、レポートを要求しています。

自作の契約書リーガルチェックアプリの出来は?
業務委託契約書のサンプルを作って、それをアプリに読ませてレポートさせました。
このサンプルには違法な点を1か所だけ仕込んでおきました。委託料の支払時期を「検品完了から60日後とする」と定めた点です。
中小受託取引適正化法(取適法)では、委託料の支払時期は「検品完了から60日後」では違法で、引渡しから60日以内でないとダメということになっています。もしこのサンプル契約に取適法の適用があるとすれば違法な規定、ということになります。この点を見抜けるかどうか。
実は、このサンプルはこのブログを書く寸前に即席で作ったもので、一度もアプリに読ませたことがなく、どんな結論が出るのか私自身も興味がありました。読ませてみた結果が、以下のとおりです。


ちゃんと答えていますね。アップしたデータの中には、「AIに契約書のリーガルチェックができるか?② その1」でお話しした公正取引委員会のガイドラインが含まれています。そのデータをAIに暗号化して送っていればAIがちゃんと回答できるはずなのですが、うまく答えています。
AIに契約書リーガルチェックをさせるのに必要なことは?
今回のブログを書くにあたっていろいろウェブで調べましたが、いろんな会社がAIを使用した契約書リーガルチェックサービスを行っていますね。それらは今回お話しした2つの問題点、つまり、
- ① AIに搭載された法律関係の情報量が豊富なこと
- ② 情報漏洩をしないこと
をクリアできているのでしょうか。その点は私にも分かりませんが、私なら、契約前に次の5点は絶対に問い合わせます。
- 契約書をチェックするための法律情報はどのようなものを使っていますか?
- 法律情報のアップデートはどれぐらいのスパンで行っていますか?
- アップした契約書のデータはどこにありますか?
- アップした契約書のデータはいつ消えますか?
- 契約書のチェックをした際のプロンプトは、AIに学習されていますか?
ちなみに、私が作ったシステムとアプリでは、次のようになります。
私の契約書リーガルチェックのスペック
「契約書をチェックするための法律情報はどのようなものを使っていますか?」
現在は以下のとおりです。
- ① 判例が300ほど
- ② 契約書ひな型が1500ほど
- ③ 政府や地方自治体が発行したガイドラインなど、公開されている法律関係の情報(労働関係・知財関係・税法関係)
- ④ 弁護士である私が勉強した法律の知識をまとめたデータ
- ⑤ 私が弁護士として業務を行ってきて習得した、契約書をチェックするノウハウをまとめたデータ
弁護士である私が自分自身でアプリを制作したことから、次のようなメリットが生まれました。
- ①について:およそ企業取引に関係のある判例のみを厳選できる点です。取引法・労働法・知財法にかなり偏ったチョイスですが、それこそ企業取引契約のリーガルチェックに必要です。
- ②について:一般的にどの契約書リーガルチェックサービスも、もともとAIに読ませたひな型との違いをAIが把握してコメントする仕組みです。AIに読ませるひな型が多いほど違いがあぶり出され、AIが動きやすくなります。
- ③について:必要なデータを弁護士である私が厳選したので、あやふやな情報や間違った情報はAIに搭載していません。
- ④について:③では不足すると私が判断した部分を、特に勉強してデータの形にしてAIに読ませ、③の上乗せを行っています。
- ⑤について:これがどの契約書リーガルチェックサービスにも真似できないところだと自負しています。業者は弁護士ではなく実務のノウハウがないので、このようなノウハウをAIに搭載できません。ノウハウに関する書籍も出ていますが、それだけでは全く不十分ですし、そもそもAIが理解できる形で搭載できない。それを私は実現しています。
個人的には、判例がまだ足りないと思っています。随時増やしているところです。
「法律情報のアップデートはどれぐらいのスパンで行っていますか?」
ほぼ毎日です。弁護士である私が「必要になるかもしれない」と思ったら、即データをアップします。
「アップした契約書のデータはどこにありますか?」
もともと私がクライアントから預かったものですので、私は持っていますが、それ以外にはどこにもありません。
ちなみに、先ほど「クラウドAにデータをアップするが」と書きましたが、アップするデータは法律情報だけであって、リーガルチェックする契約書はアップしていません。
アプリではいったんクラウドAにアップできる仕様にしましたが、実際にはその仕様は使っていません。クラウドAは私だけが使えるものなので契約書をアップしても情報漏洩しませんが、それ以上に情報漏洩がないよう厳重に保管しています。
「アップした契約書のデータはいつ消えますか?」
AIの回答が終了すれば即時に消えます。処理のたびに記憶がリセットされる設計で、終わると入力データは残らない仕組みだからです。
「契約書のチェックをした際のプロンプトは、AIに学習されていますか?」
まったくしていません。上記のとおり、処理のたびに記憶がリセットされる設計で、終わると入力データは残らない仕組みになっています。
契約書リーガルチェックシステムの用途
私はこのシステムを、顧問業務にしか使っていません。顧問契約とは、いうなれば「法律業務のアウトソーシング」であって、クライアントとなる会社と顧問弁護士の信頼関係があってはじめて成立するものです。
専門家であるからこそ弁護士に法律業務のアウトソーシングを依頼するわけです。その関係において弁護士に要求されているのは、次の3点だと思っています。
- 迅速
- 的確
- 安全
迅速でも回答が間違っていてはダメ。回答が正しくとも遅ければダメ。迅速で的確な回答でも、情報が漏洩する恐れがある方法をとるのはダメ。
なぜなら、顧問弁護士にとって最優先すべきは「顧問先の事業が継続できるようにすること」だからです。そのために私はAIを使っています。それぐらいしないと、クライアントとなる会社に対して、弁護士としての責務を果たしていないと思うからです。
顧問契約では、毎月顧問料が発生します。なにも依頼しなくても顧問料を支払う。それは顧問弁護士に対する信頼の証であり、顧問弁護士にはそれに応える義務があります。
料金・サービス内容──月額3万円〜、回数無制限
契約書リーガルチェックサービスのサイトでは「顧問弁護士に頼むより安いです」という謳い文句が書かれていますが、たいてい値段が書かれていませんね。
私はこのサイトで、明確に月額3万円~(税込)と書いています。もちろん、この契約書リーガルチェックサービス付きです。AIのチェック結果がPDFでレポートされる仕様にしていて、それをお渡しできますが、それ以外に私のコメントが必ず付きます。AIだけには任せておけないので。
このサービスの回数に上限はありません。顧問契約なので当然ですが、何回使っても同額です。
また、顧問契約なので契約書のリーガルチェックだけではありません。「これって法律的にどうなんですか?」というざっくりしたご相談も承りますし、もちろん契約書の作成もします(あまり長編になる契約書だと別料金ですが)。これら全部込みで月額3万円~(税込)です。
ご興味のある方は、ぜひご連絡いただければと思います。