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【弁護士監修】AIで判例分析をやってみた——三段論法で能力不足解雇の判例を検証【実証①】

【弁護士監修】AIで判例分析をやってみた——三段論法で能力不足解雇の判例を検証【実証①】

AIで判例検索ってできるの?

今回は、AIを判例分析に使ってみます。判例分析と一言で言っても、実際にどこまでできるのか、という点を突き詰めていきたいと思います。

その前の前提として、法律業界で判例がどのぐらい重要なのかを知っていただきたいと思います。「そんなん知ってるわ」という方は、「法律業界における判例の重要性」の項目を飛ばしてお読みください。

法律業界における判例の重要性

法的紛争における判例の位置づけ

判例とは、いうまでもなく、裁判についての裁判所の最終判断のことをいいます。

法律的な紛争が起こり、協議をしたものの結論が出なかったために裁判になり、裁判所が判決という形で結論を出すことになります。判決とは、どのように紛争を解決するかの結論となるものです。

判例は前例となる

ある法律的な紛争が起こったとします。今回は、ある会社から次のような相談があったとしましょう。

能力不足の従業員を解雇したら、解雇が無効だと言って争ってきた。どうすればいいか。

解雇については、労働契約法16条という条文があります。そこでは、次のように定められています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、いわゆる解雇権濫用法理を定めたものです。

この条文からは、解雇が無効となるケースが2つあることになります。1つは「客観的に合理的な理由を欠き」に該当すること。もう1つは「社会通念上相当であると認められない」に該当すること、です。

では具体的に、どういう場合にこれらの2つが認められたり認められなかったりするのでしょうか。それは最終的には裁判所が決めることになりますが、「同様の裁判が他でもあったから、それを踏まえれば、今回のケースの結論は●●になるだろう」という予測を付けることができます。

このように、判例は前例となることがあります。

三段論法と判例

判例は先例となるので、上記のような相談があったときには、過去の判例ではどうなっていたかを調べることになります。では、どう調べればいいのでしょうか。

法律に基づいて結論を出すという作業は、以下のような過程を経ます。

まず、条文の意味を確定させる。上記のケースでいえば、「客観的に合理的な理由を欠き」と「社会通念上相当であると認められない」とはどういう意味なのか、です。ここについて、判例ではどういう意味として把握しているのかを調査します。

次に、どのような事実があればその条文に該当する(または該当しない)と判断されるのかを調査します。

上記のケースでいえば、どういう事実関係があれば「客観的に合理的な理由を欠き」に該当するのか、また、どういう事実関係があれば「社会通念上相当であると認められない」に該当するのか、を調査します。

さらに、相談を受けた案件が、上でいう「どういう事実関係」に当てはまるのかどうかを調査します。

たとえば、能力不足であることを口頭で説明したがペーパーにはしていなかった場合に、客観的に合理的な理由があるという「事実関係」に当てはまるのか、について判例ではどのように示されているかを調査する、といった具合です。

このように、①規範を定立する、②事実を分析する、③当該事案をあてはめる、という三段論法で、判例の調査を行います。

AIを使って判例分析って

どこにAIを使う?

以上のように、AIを使うとすれば、①判例が条文の意味をどのように捉えているのか、②判例はどういう場合に条文にあてはまると考えているのか、③実際の案件が②に該当すると言っていいのか、の3点です。では、本当に使えるのか。というのが今日の本題です。

AIを判例分析に使う際の問題点

検索ソフトの中に組み込まれた判例データ

判例検索サービスというものが、あちらこちらにあります。弁護士で使っていない人はいないでしょうし、裁判所でも使っています。

これらはキーワードや判決日などを入力すると、それに該当する判例のリストが出てきます。そして人為的に、そのリストをクリックすると判例が映し出され、PDFでダウンロードしたりできる仕組みになっています。

以前も書きましたが、AIは、自分で検索して、検索結果にリンクされているデータ(PDFなど)を読みに行くことができません。ですので、判例検索サービスは文字どおり判例を検索するだけであって、上記の①②③のいずれもできません。

法務AIサービスのデータ検索

最近、企業法務や弁護士向けに、判例検索サービスと連携した法務AIが出回っています。これによれば、上記の①②③はできるのでしょうか。某サービスのウェブ広告に、こういう記載がありました。

AIの回答から根拠となる判例・法令へ、ワンクリックで連携

これは要するに、AIの回答自体には判例や法令の具体的な内容はなく、ワンクリックしないと判例や法令の具体的な内容を見ることができない、ということだと思います。

この「ワンクリック」というのが曲者です。上で書いたように「クリックしたら判例が映し出される」という点が、「クリックしなくても、AIの回答内容に判例をバッチリ反映させられています」という形にはなっていないのです。

AIはどこまで判例を分析できるか?

というわけで、某法務AIサービス(上のウェブ広告のものとは違いますが、判例との連携をうたっているサービスです)と、私が制作したAIに、次のような質問をしてみます。

検証に使う質問

能力不足で従業員を解雇した場合について、判例の傾向を分析してください。

先ほどの①②③がきちんとできていないと答えられない質問です。さて、どうなるか。

実証②に続く>

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