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【弁護士監修】AIで判例分析をやってみた——市販判例DBとの精度比較、結果は?【実証②】

【弁護士監修】AIで判例分析をやってみた——市販判例DBとの精度比較、結果は?【実証②】

実証①から続く>

AIに投げかけた質問内容

前回の最後で、AIに投げかける質問を挙げました。「能力不足で従業員を解雇した場合について、判例の傾向を分析してください」です。

これを、某判例DBと連携した法務AIサービスと、私が制作したAIの双方に投げてみます。

某サービスの回答

次のようなことが回答されました。一部を引用します。

判例上、解雇が認められるためには、能力不足が「著しく」、かつ「向上の見込みがない」ときであることが必要とされています。具体的には以下の点が検討されます。重大性:単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じさせているか、あるいは重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に達していること。相対評価の限界:人事考課が相対評価である場合、下位の評価が続いたという事実だけでは、直ちに解雇すべきほどの業績不良とは認められない場合があります。

裁判例は、解雇の相当性を判断するにあたり、使用者が是正のための努力を尽くしたかを重視します。改善の機会:注意・警告を与え、反省を促したにもかかわらず改善されないことや、一定期間内に業績が改善しない場合の解雇の可能性を具体的に伝えた上での機会付与が求められます。指導の具体性:原因を究明し、問題意識を共有した上での具体的な改善策の提示が必要です。一度や二度の注意指導のみでは不十分とされる傾向があります。

……などなどです。まだ続くのですが、書きすぎると某サービスが何なのか分かってしまうので、ここまでにしておきます。

正直に言って、ここまで回答できるのはすごいと思います。前回書いた、①判例では条文をどのような意味で捉えているか、②判例がどのような場合に①にあてはまると言っているのか、という点については明確にされています。

ただ、③本件が具体的に②に当てはまるのかについては、「こういう場合には該当するが、こういう場合には該当しない」という分析がされていないのが少し残念です。ざっくり言えば「判例の文章の引用が全然ない」。

引用がないから、どういう場合にどうなるのかという分析ができない。やっぱり判例を別途読んで分析しないといけない、ということになります。

私の制作したAIの回答

これも長いので、一部を引用します。

能力不足を理由とする解雇に関する判例傾向の分析

1. 基本的な法的枠組み

解雇権濫用法理(労働契約法16条):解雇の有効性は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効」とする労働契約法16条に基づき判断されます。

能力不足が解雇理由となるための要件:単なる能力不足の存在だけでは不十分であり、「能力不足等により企業経営に支障が生じるなどして、企業から排除すべき程度に達していること」が必要とされています(エス損害保険事件)。

2. 雇用類型別の判例傾向

(1) 中途採用の管理職・専門職 【原則】純粋な潜在的能力の不足のみで解雇の合理性が認められるケースが比較的多い。

① 職務限定型の中途採用:具体的な成果を出せなかった場合に解雇が有効とされやすい傾向がある。裁判所は「長期雇用を前提として新卒採用する場合と異なり、最初から教育を施して必要な能力を身につけさせるとか、適性がない場合に全く異なる部署に配転を検討すべき場合ではない」と判示した事例がある。ただし、就業規則の解雇事由が「将来の見込みがない」等の文言であれば、改善努力への期待可能性も考慮される(語学能力を期待された中途採用事案)。

② 記者職での中途採用(ブルムバク・エル・ピ事件):「会社は当該記者との間で具体的改善矯正策を講じたとは認められない」として解雇を無効。中途採用であっても、改善指導の実施が求められることが明らか。

③ 医師等の専門的資格保有者:資格保有という点から「能力不足」と単純に評価するよりも、職務上の行動をコンピテンシー面から評価した上で解雇の合理性を判断する傾向がある。

(2) 一般社員・非管理職 【原則】職務限定の有無を問わず、能力不足単独での解雇は認められにくい。

① 判断の総合性:能力不足のみならず、労働意欲の欠如/コンピテンシー面での問題(勤務態度・行動様式)/業務遂行の態様の問題、を総合的に考慮して判断される。

② 相対評価による人事考課と解雇(セガ・エンタプライゼス事件):考課順位が下位10%未満の従業員を解雇した事案。相対評価である以上、「相対的に下位の考課順位に属する者がいなくなることはありえない」として、解雇事由はきわめて限定的に解釈されなければならないと判示。「さらなる教育・指導により労働能率の向上を図る余地がある」として解雇を無効とした。東京地裁平成11年10月15日決定においても、「著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがない」場合でなければならないとした。

③ 成績不良・業務ミス(森下仁丹事件):「従業員としての適格性がなく解雇に値するほどの技能発達の見込みがないとはいえない」として解雇を無効

④ 絶対評価が用いられた場合(PwCファイナンシャル・アドバイザリー・サービス事件):人事考課が絶対評価として行われていたために、マネージャー職としての能力不足が否定された事例もある。

内容としては、某サービスと一見同じように見えます。でも判例検索で重要なのは、「判例ではどう言っていて、それに基づくとどういう場合にはどうなるのかが分かる分析が欲しい」ということです。

なぜなら、全く同じ事実関係の案件など絶対にないので、判例があればどういう結論になるかを予想できる分析を求める必要があるからです。

その意味でいえば、某サービスの回答は何かしらの書籍の丸写しであって、AIによる分析はどこにもない、といえるわけです。

AIにおける判例分析の可能性

でも、AIの能力はそんなものではありません。すさまじい情報分析力を持っています。だから、判例の動向分析ぐらい、余裕でできます。

自作AIが判例の「動向分析」を行える理由

その点、私の制作したAIは「判例の動向分析」に絞って回答しているので、ある程度それを行えたということになります。

とはいえ、私の制作したAIといっても、皆さんが普段使っているAIに、判例と政府のガイドラインやガイドブックを読ませただけです。今回の質問でいえば、厚生労働省のガイドブックと大阪府のガイドブックと判例だけです。

地道な積み重ねが支える判例データベース

ただ、とにかく面倒くさい。判例といっても、どこでどんな判例が必要になるかは分からないので、ガイドラインやガイドブックに載っている判例の原文にあたり、それをAIが読みやすいように調整して保存する——という作業を延々と繰り返します。

第一審(地裁など)の判決が控訴された場合には、「第一審では●●と判断されたが、控訴審では●●と判断された」というようにデータ化します。それ以外にも、関連する判例があれば手あたり次第にデータ化する。そうした地道な作業のうえに成り立っているものです。

それでも自分で作る理由──大手も動き始めた今だからこそ

それでも私がそういうことをするのは、ただ「自分が欲しい情報を、欲しいだけ得られることで、クライアントの事業に貢献する」という目的を達成するためだけです。

既存のサービスで満足できないから自分で作った、というだけのことです。言い換えれば、自分で作れるんだ、ということです。

先日、企業法務を手がける某巨大法律事務所が、今後はAIの進化に適合した業務改革を急いでいる、というようなことが日本経済新聞に出ていました。巨大法律事務所ですら、やっと急ぎ始めている状況です。

もっと小規模の法律事務所だと、もっと遅い。そのうち、マンパワーをフルに生かした作業をもとに作った企業のAIが、弁護士の分析能力を超えるのは時間の問題だと思います。

そうならないうちに、弁護士は手を打たないといけない。私も負けないように、日々精進します。

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