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【弁護士監修】AIに読ませる「データの作り方」──AIの精度を本当に決めるもの

【弁護士監修】AIに読ませる「データの作り方」──AIの精度を本当に決めるもの

前回(「なぜ大企業の社内AIは正しく回答できないのか」)、大企業がデータセンターに巨額を投じても社内AIが正しく回答できない理由として、ローカルAIの3つの限界を挙げました。そして最後に、もう一つ、見落とされがちな問題に触れました。そもそも、AIに読ませるデータが、AIに読みやすい形で作られていない、という問題です。

今回はこの「データの作り方」について書きます。結論から言えば、AIの回答精度を本当に決めているのは、GPUでもAIモデルの賢さでもなく、この地味な作業です。

なぜ「データの作り方」で精度が変わるのか

AIは、渡された大量のデータの中から、質問に関係しそうな部分を「一定のかたまり」で切り出して読みます。前回書いた「一気に読む量」のことです。ここで問題になるのは、そのかたまりが意味の途中でぶつ切りになっていたり、複数の論点が一つのかたまりに混ざっていたりすると、AIは「関係のあるデータ」を正しく拾えず、拾っても正しく理解できない、ということです。

料理にたとえると分かりやすいと思います。どんなに高性能なコンロ(GPU)と一流の腕(AIモデル)があっても、下ごしらえのされていない食材を放り込めば、まともな料理は出てきません。データの整形は、この「下ごしらえ」にあたります。ここを飛ばすと、後段でどれだけお金をかけても味は決まらないのです。

生の法律データは、そのままではAIに読めない

実際の判例や政府のガイドラインは、AIにとって非常に読みにくい形をしています。具体的には、次のような問題があります。

① 一文が長すぎる

法律文書は、一文が異常に長いのが特徴です。前回書いたとおり、日本語は単語の間に空白がなく、ある程度まとめて読ませないと意味が取れません。とはいえ、長すぎる一文をそのまま渡すと、今度は一つのかたまりに情報が詰め込まれすぎて、AIが要点を取りこぼします。意味を壊さずに、適切な長さに区切る——この匙加減が必要です。

② 構造(見出し・段落)が壊れている

PDFからテキストを抜き出すと、見出しと本文が混ざったり、改行がめちゃくちゃになったりします。この状態では、AIは「どこからどこまでが一つの論点なのか」を把握できません。人間が読んで意味が取れるように、段落と見出しを組み直す作業が要ります。

③ ノイズが混ざっている

ページ番号、ヘッダーやフッター、OCR(画像の文字読み取り)の誤変換、脚注の番号——こうしたノイズは、AIの理解を確実に狂わせます。人間なら自然に読み飛ばすものでも、AIは律儀に「意味のある文字」として拾ってしまう。ですので、一つひとつ取り除いていきます。

④ 文脈(メタ情報)が抜けている

判例をただ貼り付けただけでは、AIは「これが何審の、どの条文についての判断なのか」を知りません。ここが特に重要です。以前「AIで判例分析をやってみた」でも触れましたが、第一審の判断が控訴審で覆ることがあります。「第一審では●●と判断されたが、控訴審では●●と判断された」と明記してデータ化しておかないと、AIは古いほうの結論をそのまま答えてしまう。判例には、こうした注記やタグを人の手で付けていく必要があります。

この作業は、結局、弁護士にしかできない

ここが核心です。「どこで文を区切るか」「何がノイズで、何が残すべき重要な情報か」「この判例にどんな注記を付けるか」——これらはすべて、法律の中身を理解していなければ判断できません

データ整形を外部の業者に任せることもできますが、業者は弁護士ではないので、「意味を壊さない区切り方」も「付けるべき注記」も分かりません。結果として、形は整っていても中身がずれたデータができあがり、AIはそれをもとに堂々と間違えます。私が契約書のひな型や判例を、AIが読みやすい形に一つひとつ整えて保存しているのは、まさにこのためです(その仕組みは「弁護士が自社開発したAI法務システム」で紹介しています)。地味で、面倒で、しかし精度を左右する作業です。

大企業のAIが「正しく回答しない」本当の理由

前回、「一度に読める文字数の上限はお金で解決できない」と書きました。しかし、それ以前の段階で、多くの企業のAIは、このデータ整備でつまずいているのだと思います。

立派なデータセンターを建て、高性能なGPUを何台並べても、そこに放り込むデータが整形されていなければ、AIは正しく答えません。派手なハードウェアの話の裏で、本当の差はここでついています。「AIを使いこなす」とは、実はこの地味なデータ整備を、意味の分かる人間が地道にやり続けることなのです。

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おわりに

AIの精度は、モデルの賢さよりも、読ませるデータの質で決まります。そしてそのデータを整えられるのは、その分野の中身が分かっている人間だけです。当事務所が、弁護士自身がデータを選別・整形して自作AIを運用しているのは、この確信からです。

「AIを入れたのに精度が出ない」という声をよく聞きます。その原因は、多くの場合、モデルやGPUではなく、データの下ごしらえにあります。企業法務でAIを本当に武器にしたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

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