2026年8月31日、消費者庁の消費者契約法検討会(正式名称は「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」)が第8回会合を開き、中間取りまとめ(案)が配布されました。
その1週間前の8月24日には、デジタル取引・特定商取引法等検討会が同じく中間取りまとめ(案)を配布しています(別記事で扱いました)。同じ「解約させない設計」に、性質の異なる2つの網が同時にかかろうとしています。
本記事は、そのうち民事ルール側を扱います。行政処分の話ではありません。契約の効力と、適格消費者団体からの差止請求の話です。
この記事では、原文にあたって次の順序で整理します。
- 二本立ての構図——どちらが自社に先に届くのか
- 中間取りまとめ(案)の構成
- 解約妨害として禁止される行為(原文の列挙)
- 「ダークパターン」という語が一度も出てこないこと
- 効果を差止請求のみとした理由
- 解約料——A案・B案が採られなかった経緯
- 第3条第1項の改正——説明責任の強化
- 契約の拘束力からの解放——要件が3つから2つへ
本記事は2026年9月2日時点の情報に基づく解説です。消費者庁の公表資料(第8回検討会 資料「説明資料ー中間取りまとめ(案)ー」)の原文により確認しています。引用は原文のままで、当事務所の評価と区別して記載しました。第8回の議事録は本稿執筆時点で未公表です。未確認の論点は記事末尾に明記しています。
この記事の結論
- ①解約妨害が、消費者契約法で正面から禁止される方向です。不実告知・断定的判断・退去妨害・不退去に加え、「解約の申入れを受けることを拒否する行為・不当遅延」が列挙されました。
- ②違反しても、契約が解約されたことにはなりません。解約擬制も新たな解約権も置かず、実効性の担保は適格消費者団体による差止請求に委ねる設計です。
- ③「ダークパターン」という語は、案の本文に一度も出てきません。代わりに「環境設計」という受け皿の語が使われ、具体は下位法令に委ねられます。
- ④解約料のルールは変わりません。立証責任の転換(A案・B案)は検討のうえ採られず、説明責任の強化で対応する方向です。背景に、最高裁令和7年12月23日判決があります。
第1章 二本立ての構図
まず、2つの検討会の関係を整理します。ここを取り違えると、備え方を間違えます。
| 論点 | デジタル取引・特定商取引法等検討会 | 消費者契約法検討会 (本記事) |
|---|---|---|
| 法的性質 | 行政取締法規 業務停止命令・指示等 | 民事ルール 取消し・無効・差止め |
| 解約妨害 | 不当な遅延・過度に複雑な手続を違法行為として規律 | 不当な行為を禁止する規律を設ける方向 |
| 効果 | 行政処分 | 直接の民事効果は置かず、差止請求のみ |
| 表示・UI | 誤認を招く表示・攻撃的表示を規律 | 直接の対象外。ただし解約妨害の受け皿として「環境設計」を規律 |
| 説明・情報提供 | 最終確認画面の表示義務の拡張、注文完了後の電子書面交付 | 第3条第1項の改正——複数プランの解約条件、解約料の算定根拠 |
| 解約料 | 直接の対象外 | 第9条第1項第1号の見直しは行わない方向 |
| 会合日 | 2026年8月24日(第8回) | 2026年8月31日(第8回) |
どちらが先に届くのか
制度上の重さでいえば行政処分です。しかし時間軸で見ると、順序は逆になりえます。
いずれの規律も、法改正を経て施行されるまで効力を持ちません。他方で適格消費者団体からの申入れは、現行法の枠内で今日から可能です。実際、最終確認画面の表示を問題とした申入れは、既存の特定商取引法の規定を根拠に行われています。
この点は別記事で詳しく扱います。
第2章 中間取りまとめ(案)の構成
本体は全30ページ、大きく4つのパートに分かれています。
| パート | 内容 | 本記事での扱い |
|---|---|---|
| 第1 | 消費者の多様な脆弱性への対応 (事業者の配慮を促進する仕組み/契約の拘束力から消費者を解放する仕組み等) | 第7章 |
| 第2 | 消費者契約の各過程に関する必要な規律 (継続的契約からの離脱=解約妨害の禁止/更新/変更/死亡時) | 第3〜第5章、第8章 |
| 第3 | 「解約料」の実態を踏まえた実効的な仕組み | 第6章 |
| 第4 | 横断的な事項(法目的の在り方/「消費者」の定義の在り方) | — |
なお、こちらの案も日付が入っていません。表紙は「(案)中間取りまとめ 令和8年○月」、本文の審議回数も「計○回」と伏字のままです。確定した方針ではありません。
第3章 解約妨害として、何が禁止されるのか
本記事のいちばんの中心です。案は、禁止すべき行為を3つのまとまりで列挙しています。
ⅰ)消費者の解約を妨げるために行う以下の行為
・消費者が解約をするかどうかについての判断に通常影響を及ぼす事項についての不実告知
・将来における変動が不確実な事項についての断定的判断の提供
・消費者が解約をしようとしている場所からの退去妨害
・消費者が解約をしようとしている場所からの不退去
・消費者から解約の申入れを受けることを拒否する行為・不当遅延
・上記のほか、健全な商慣習に照らし不当に消費者の解約を妨げる行為・環境設計
ⅱ)ⅰ)のほか、解約に関して消費者を欺く行為・威迫して困惑させる行為
ⅲ)解約によって実現されるべき状態を妨げる行為として、解約によって事業者に生じる債務の履行の不当な拒否・遅延
消費者契約法検討会 中間取りまとめ(案)第2の1(2)より実務の観点から、3点を指摘しておきます。
① 「解約の申入れを受けることを拒否する行為・不当遅延」
ここが、いわゆる引き止めフローに直接かかります。
解約ページにたどり着けない設計、電話がつながらない体制、「担当者から折り返します」で処理が止まる運用——これらは「申入れを受けることの拒否」または「不当遅延」として評価されうる領域に入ります。
② 「不退去」「退去妨害」がリストに入っていること
この2つは、消費者契約法第4条第3項が定める従来の困惑類型です。それが解約場面にも持ち込まれます。
店舗での解約手続を、担当者が席を立たせずに引き止める。あるいは訪問して解約を思いとどまらせようとし、帰らない。従来は契約締結の場面の話でしたが、今後は解約の場面でも同じ評価軸が使われます。
③ ⅲ)の「債務の履行の不当な拒否・遅延」
解約自体は受け付けたのに、返金・返品の受領・データの削除・機器の引取りといった後処理が進まない——これも独立して規律対象になります。
解約受付の設計ばかりに注意が向きがちですが、解約後の処理も見られます。
第4章 「ダークパターン」という語は、一度も出てきません
これは条文解釈上、重要な点だと考えています。
中間取りまとめ(案)の本文には、「ダークパターン」という語が一度も現れません。代わりに使われているのが、先ほどの列挙にあった「環境設計」という語です。
なぜ「環境設計」なのか
当事務所の推測ですが、「ダークパターン」は行為が悪質であるとの評価がされたものを指す言葉であり、具体的にどのようなものが悪質なのかがはっきりしないため、法令の要件としては使いにくい面があります。他方「環境設計」は悪質か否かを問わない言葉であり、「意図の有無を問わず、解約を妨げる方向に作用する画面・体制の設計」を広く受け止められます。
この語の選択が意味するのは、「悪意でやったわけではないからこの規制には引っかからない」という説明が効きにくくなるということです。設計が結果としてどう作用しているかが問われます。
なお、この受け皿部分には脚注が付されており、「下位法令で具体的な行為を規律することを想定。」とされています。何が該当するかは、法律ではなく下位法令に書かれます。
第5章 効果は「差止請求のみ」
禁止されるとして、違反した場合どうなるのか。ここが今回いちばん議論された部分だと読めます。
このため、事業者が解約妨害行為をした場合において、更に消費者に解約権を発生させることによって解約権の行使が妨げられているという状態を解消するものではないことから、その必要はない。
また、解約妨害行為がなされた事実のみで消費者の権利行使を介在させずに解約という効果を生じさせること(解約擬制)は、消費者の権利行使を介在させることなく契約上の効果の発生を擬制することは既存の取消権など他の規律と比較しても均衡を欠くことから、解約妨害禁止の規律に違反した場合の法的効果として直接的な民事上の効果を定める必要はない。
このように直接的な民事上の効果は定めないものの、事業者による同様の解約妨害行為の未然防止又は拡大防止を図る必要があることから、適格消費者団体による差止請求の対象とする方向が考えられる。
同 第2の1(2)イより整理すると、こうなります。
| 検討された効果 | 結論 | 理由 |
|---|---|---|
| 新たな解約権の発生 | 置かない | 解約権はもともとある。行使が妨げられている状態は解消されない |
| 解約擬制 (妨害の事実だけで解約の効果) | 置かない | 権利行使を介在させずに効果を擬制するのは、既存の取消権等と比べて均衡を欠く |
| 適格消費者団体による差止請求 | 対象とする方向 | 未然防止・拡大防止の必要 |
この設計が実務に持つ意味
個々の消費者から「解約妨害だから契約は終了している」と主張される場面は、想定されていません。そこは従来どおり、個別の契約解釈の問題です。
代わりに来るのは適格消費者団体からの申入れです。これは個別の消費者との紛争ではなく、画面設計や体制そのものの是正を求めるものです。1件ずつ和解して終わり、という処理ができません。
備え方が変わる、ということです。
ひとつ、後退した論点があります
ワーキンググループ段階の「論点整理」では、解約妨害の禁止に加えて、契約の変更時の通知義務についても差止請求の対象とする方向が示されていました。しかし本案では、次のようにトーンダウンしています。
通知義務に関し、差止請求制度を発展・活用させて、適格消費者団体が事業者に対して義務行為の実施を請求することを可能とすることについては、以下の点で慎重な検討を要する。
・既に行われた変更について事業者に通知義務の実施を請求することに、どのような意味があるのか。
・将来行われ得る変更について事業者に通知義務の実施を請求することは、紛争の成熟性及び請求の特定性があるのか。
差止請求は「やめさせる」制度であって、「やらせる」制度ではない——この性質上の限界が意識された結果だと読めます。解約妨害の禁止(=やめさせる)は差止請求と相性がよく、通知義務の履行(=やらせる)はそうではない、ということです。
第6章 解約料──立証責任の転換は、採られませんでした
消費者契約法第9条第1項第1号は、解除に伴う損害賠償額の予定・違約金の条項について、「平均的な損害の額」を超える部分を無効とする規定です。
実務上の難点は明白でした。「平均的な損害」を立証する材料は、すべて事業者側にあります。消費者にとって証拠が偏在している。だから立証責任を転換すべきだ——国会の附帯決議でも、引き続き検討することが求められてきた論点です。
検討された2つの案
| 案 | 内容 |
|---|---|
| A案 | 第9条第1項第1号について事業者が立証責任を負うものとする。ただし価格差別目的の解約料については、平均的な損害を基準としない新たな基準を設ける(同種の商品・役務に複数の合理的な選択肢がある場合、最も解約料が安いものが平均的損害を超えないときは、他の選択肢に平均的損害基準を適用しない等) |
| B案 | 原状回復賠償に相当する部分等は消費者が、それ以外は事業者が立証責任を負うものとする |
結論は「見直さない」
…平均的な損害というメルクマールを基礎としつつ、取引実務において多種多様な解約料を精緻化して適切な解約料を導く一律の基準を設けることが困難であること等が次第に明らかになってきた。また、平均的な損害の立証は、消費者にとっては証拠の偏在の観点から困難であるが、実際のビジネスにおいては必ずしも損害の発生を前提として「解約料」を定めていない場合がある中では、あらゆる解約料について一律に事業者が平均的な損害の立証責任を負担することも困難であることが指摘された。…同法第9条第1項第1号の見直しは行わないことが考えられるが、事業者の説明責任を強化することとし…
同 第3の1より理由の中核は「必ずしも損害の発生を前提として解約料を定めていない場合がある」という一点だと読めます。
この理屈を、具体例で考えてみます
年間契約のほうが月額契約より安い、というプランは広く存在します。この価格差は損害ではなく、長期の確約に対する割引です。年間契約を途中でやめたときの解約料は、実質的にはその割引の返上にあたります。つまり、「年間契約を途中でやめたときには、月額契約であれば本来支払ったはずの金額との差額は払ってもらいますよ」という定めがあるのと同じ扱いにすることになるということです。
ここで「平均的な損害を立証せよ」と求めると、「年間契約においては、なぜ月額契約と年間契約/12の差があるのかを立証せよ」といわれているのと同じことになり、損害の発生を前提としていない年間契約の価格設計そのものが説明できなくなります。A案が価格差別目的について別基準を設けようとしたのは、この問題への対応でした。
結果として、その切り分けも困難だとして、条文の改正自体が見送られています。
背景にある最高裁判決
案の脚注には、最高裁令和7年12月23日第三小法廷判決(令和6年(受)第204号)が引かれています。LPガスの供給等に関する契約を消費者が終了させる場合に、LPガス設備の設置費用の一部を支払う旨の契約条項が問題となった事件です。
案の脚注によれば、同判決は、この条項が消費者契約法第9条第1号(当時)にいう「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に該当するとしたうえで、解除された場合に事業者に生じる平均的な損害は存在しないとして、当該条項が無効になる旨を判示したとされています。
読み方に注意が必要です
この判決は「立証責任の転換がなくても第9条第1項第1号は機能している」という文脈で引かれています。案は、同号が「不当な解約料設定の抑止に一定の役割を果たしている」ことを、見直しを行わない理由の一つとして挙げています。
事業者側から見れば、条文が変わらないことは「安心してよい」という意味ではありません。現行の第9条第1項第1号のまま、設備費用の回収を解約時に契約条項で行う設計が無効とされうる——それが最高裁で示された、ということです。
なお、本判決の詳細な分析・検討については、ここでは控えさせていただきます。個別案件の検討にあたっては判決原文をご確認ください。
第7章 第3条第1項の改正──説明責任の強化
第9条第1項第1号を改正しない代わりに、説明・情報提供の側で対応するのが案の設計です。
具体的には、消費者契約法第3条第1項を改正し、消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定又は違約金の額・支払時期等が異なる複数の選択肢がある場合には、事業者は、消費者に対し、当該複数の選択肢についての情報を、適時・適切な方法で提供することを促す方向が考えられる。
また、事業者の消費者や適格消費者団体に対する解約料の算定根拠の説明に係る努力義務(消費者契約法第9条第2項、第 12 条の4)について、契約の締結及び履行のために通常要する費用以外のものが含まれる場合にはその旨を、参考とした業界等の考え方がある場合にはその旨を、それぞれ示して説明することを促す方向が考えられる。
同 第3の2より2つの規律が提案されています。
| 対象 | 内容 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 複数プランの提示 (第3条第1項) | 解約料の額・支払時期が異なる複数の選択肢がある場合、その情報を適時・適切な方法で提供 | 年間プランを勧める際に、月額プランの存在と解約時の違いを示すという運用が求められる方向 |
| 算定根拠の説明 (第9条第2項・第12条の4) | ①通常要する費用以外のものが含まれる場合はその旨②参考とした業界等の考え方がある場合はその旨 | 「損害以外の要素が入っている」と正面から説明することが想定されている |
ここが、この案のいちばん実務的な部分だと考えています。解約料の水準そのものではなく、その根拠を言語化できているかが問われる方向に動いています。
第8章 契約の拘束力からの解放──要件が3つから2つへ
案の「第1」に置かれた、消費者の脆弱性に関する論点です。当初のワーキンググループ案は、次の3要件でした。
| 要件 | 内容 | 本案での扱い |
|---|---|---|
| ① | 適切な判断をすることが困難な状態で | 落とす方向。実質基準では事業者の予見可能性を確保できず、形式基準では一定の消費者が市場から排除される弊害を避けられない |
| ② | 深刻な結果となる内容の契約を締結した場合 | 中心に据える |
| ③ | 「第三者」による見守りを促す仕組み | 落とす方向。第三者の範囲・役割・適切性の担保をめぐる課題を解決することが困難 |
| 追加 | — | 事業者が②を知っていたことを要件に取り入れる方向 |
「事業者が知っていたこと」という主観的要素の追加は、事業者側にとって重要な変化です。予見できない場面で契約が覆るリスクが、その分だけ限定されます。
案は同時に、「事業者において消費者側の事情を積極的に調査することまでが求められるものではない」ことと、「事業者が不当な情報収集を行わないようにすることは言うまでもない」ことを明記しています。脆弱性を把握するために顧客情報を集めにいく、という方向は否定されています。
なお継続的契約については、「実体法上消費者が解約権を有していない場合に、消費者契約法で消費者契約一般に新たな解約権を設けることについては慎重な検討が必要である」とされています。いつでも解約できる権利が一般的に創設されるわけではありません。
今週やるべきこと
案の段階です。いま約款を書き換える必要はありません。ただ、次の5つは法改正と無関係に意味があります。
| 順序 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1日目 | 解約の申入れを受けてから完了するまでの実際の日数を、直近3か月分の実データで測る。「不当遅延」の議論は、体感ではなく数字で持つべきです | 2時間 |
| 2日目 | 引き止めフローの棚卸し。解約ボタンまでのクリック数、引き止め画面の回数、「折り返し」で止まる分岐がないかを確認 | 半日 |
| 3日目 | 解約後の処理(返金・返品受領・データ削除・機器引取り)の所要日数を測る。ⅲ)はここを見ています | 2時間 |
| 4日目 | 解約料・違約金を定めている場合、その金額の根拠を1枚の紙に書けるか試す。書けなければ、それが今回の宿題です | 半日 |
| 5日目 | 複数プランがある場合、勧誘時に解約条件の違いを説明する運用になっているかを営業側に確認 | 1時間 |
本稿執筆時点で未確認の論点
- 第8回検討会(2026年8月31日)の議事録・議事要旨。本稿執筆時点で未公表です。第7回分までは公表されています。
- 中間取りまとめの正式な取りまとめ日と、本体の公表時期。案の表紙は「令和8年○月」と月が未記入です。
- パブリックコメントの実施予定。案の記載からは確認できませんでした。
- 解約妨害禁止の規律が置かれる条番号。案は規律の方向を示すにとどまり、条文の位置は示されていません。
- 「健全な商慣習に照らし不当に消費者の解約を妨げる行為・環境設計」の具体的な類型。脚注で下位法令に委ねる旨が示されているのみです。
- 契約の拘束力からの解放に関する「深刻な結果となる内容の契約」の定義・類型。具体的な事例や裁判例を踏まえて要件の明確化を図るとされており、確定していません。
- 最高裁令和7年12月23日判決の詳細な分析・検討ここでは控えさせていただきます。個別案件の検討にあたっては判決原文をご確認ください。
おわりに
この案を読んで、いちばん考えさせられたのは効果を差止請求に一本化した設計でした。
解約妨害を禁止する。しかし違反しても契約が終了したことにはならないし、それ自体から損害賠償請求権が生まれるわけでもない。是正を求めるのは、個々の消費者ではなく適格消費者団体です。
これは個別紛争の解決ではなく、設計の是正を狙った制度だということです。1件ずつ和解して幕を引く、という対応が効かない。指摘されたら、画面や体制そのものを直すことになります。
そしてもう一つ。「環境設計」という語の選択です。
解約妨害の議論は、これまで「そんなつもりはなかった」という言い分と、どこかで折り合ってきました。しかし環境設計という言葉は、意図を問いません。設計が結果として解約を妨げる方向に作用しているなら、それが問題だという立て付けです。
実際、私が拝見してきた範囲でも、解約導線が複雑になっている会社の多くは、悪意で作ったわけではありません。しかし、明らかに悪意で作ったものもあることも厳然たる事実です。そして、悪意による手口はどの業者も似通っていて、「このシステムは明らかに悪意で作っているな」というものと「このシステムは悪意で作ったものではなく、たまたまそうなってしまっているな」というものは、一目瞭然で分かります。
だからこそ、悪意でないのであれば、自社のシステムがそういうシステムでないように「測る」という作業を行ってみてください。解約に何日かかっているのか。何クリック必要なのか。実際に解約スキームをたどれば何手で解約できるか。数字にすれば、直すべき場所は自ずと見えてきます。
当事務所は、事業スキームから法的リスクを洗い出すことを方針としています。「この約款は有効か」ではなく、「この解約体制が、誰にどう説明できるか」という視点で拝見します。継続的契約・サブスクリプションの設計、解約料の根拠整理について、お気軽にご相談ください。
一次情報
- 消費者庁 第8回 現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会(2026年8月31日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_006/047226.html - 同 資料「説明資料ー中間取りまとめ(案)ー」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/assets/consumer_system_cms205_260828_02.pdf - 消費者庁 消費者契約法検討会 開催実績・配布資料
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_006/ - 消費者庁 第8回検討会の開催について(2026年8月25日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/047225 - 消費者庁 資料2-1「中間取りまとめ(案)」(デジタル取引・特定商取引法等検討会)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/assets/consumer_transaction_cms101_260824_03.pdf - e-Gov法令検索「消費者契約法」(平成12年法律第61号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061