AIは契約書のリーガルチェックができるか?
前回は、AIを使って契約書を作成できるか、ということを書いてみました。今回は、AIを使って契約書のリーガルチェックができるか、について述べたいと思います。
最近、AIを使って契約書のリーガルチェックができるサービスがいろいろ出てきています。こうしたリーガルチェックサービスは通常サブスクリプションで、月々のサービス料を支払うことになりますが、「AIを使って契約書のリーガルチェックができるか」と問われれば「できる」ということになります。
では、こうしたサービスでのチェックは、法律実務に応えられるものになっているのでしょうか。
AIによる契約書のリーガルチェックの精度
最近、契約書の作成やリーガルチェックをしていると、相手方がAIを利用してリーガルチェックをしているのをちらほら見かけるようになりました。少しずつですが、法律分野にもAIが普及してきているのを実感します。
なぜ相手がAIを使っていると分かるかというと、「法律分野に関するリーガルチェックを隙間なくやっているから」です。本当に隙がありません。普通は気づかないだろうという部分も、きっちり指摘してきます。
そういう意味では、「法律実務に応えられるものになっている」といえると思います。
AIにはできない契約書のリーガルチェック
AIの限界──搭載外の情報は使えない
そもそもAIが契約書のリーガルチェックをできるのは、事前にAIのモデルに法律知識を搭載しておき、「質問を論理的に分析して、AIに搭載された法律知識を利用して、論理的に回答する」ようにAIを設定しているからです。
その設定方法の説明は省略しますが、逆にいえば、この設定からすれば「AIに搭載された知識以外の情報をAI自らが獲得し、その情報をもとに演繹的に考察して回答することはできない」ということになります。
簡単にいえば、「AIに搭載された以外の情報を使わないと正確な答えが出ない質問には、間違った回答をする」ということです。
インコタームズを例に考える
たとえば、法律的にはベストな回答だけれども、その回答内容が実態に見合わない、ということもあります。契約書のリーガルチェックに使うAIには、当然インコタームズに関する知識が搭載されています。
売主Aが買主Bとの売買契約について、そのAIで契約書のリーガルチェックをしたとします。この売買契約でAの負うリスクがFOBよりも大きいものだったとすると、AIは確実に「この契約書では売主のリスク負担が大きいです」と回答します。
でも実際には、AがBに販売する商品について、AはCから購入してCが直接Bに送ることにしていたとすると、Aのリスク負担うんぬんよりも、そもそもABCの三者契約にしたほうがいいのではないか、という意見も出てきます。ところが、そんな意見をAIが出してくれるわけではありません。
なぜなら、AC間取引があるという情報がAIに搭載されていないからです。「Aだってどこかから仕入れてくるんだから、それぐらい想定してよ」というのは、AIには通用しません。
そうすると、AIの回答は、実は間違った回答だったといえるかもしれないわけです。
契約書のリーガルチェックにAIを使うか?
カスタマイズが鍵になる
このように書くと、いかにも契約書のリーガルチェックにAIは使えない、というふうに見えるかもしれません。でも、「AI時代の契約書作成業務」でも書いたように、AIの真骨頂はカスタマイズです。AC間の情報についても、情報としてAIに搭載すればいいんです。
契約書のリーガルチェックを心底パーフェクトに近づけるために必要なのは、「カスタマイズされた情報をAIに搭載する技術を実践すること」だと思っています。実際に私はそれを実践し、どんどん修正していっています。
そういう意味では、弁護士としての私の仕事は、「AIに読ませる情報の選別」と「情報を読んだAIがうまく回答するための設定」かもしれません。
正直、「自分は何屋さんなんだろう?」と思うこともありますが、そういう時代なんだろうと思います。
<実証編へ続く>